コロナウィルスの追跡 (第 1 部): 中国エネルギー業界の動向
Orbital Insight は、コロナウィルスが世界中の企業、各業界、市場に、実際にいかなる影響を及ぼしているのか、現場の状況をシリーズでお伝えする。
Orbital Insight GO: 中国の石油備蓄量は、メディアの見解よりは少量
コロナウィルスの勃発により、中国における通常の生活と移動が完全な混乱に陥った。ひとつ、納得のいく答が出ていないのは、コロナウィルス蔓延によるエネルギー業界への実際の影響だ。
ウォール街やエネルギーに特化したメディアは、中国における石油などのエネルギー消費の落ち込みだけでも、1 日あたり数十万バレルの消費減となり得る、と早々に試算している。一方、仏パリを拠点とする国際エネルギー機関は、世界の原油需要は全体としては2019 年度 1 四半期の開始当初に対し、今四半期の需要は 43万5000 バレル減少すると予測している。さらに、米国エネルギー情報局では、今年度のグローバルな石油需要の伸びについて、予測を下方修正し、1 日あたり 31 万バレルとした。
しかしながら Orbital Insight のお客様は、弊社の地理空間分析により、事態発生の初日から急激な感染拡大期を通じ、中国の原油備蓄量の情報を確実に把握できていた。Orbital Insight は、世界の石油備蓄可能量にして 60 億バレル以上を示唆する 25,000 超の浮き屋根式タンク(フローティング・ルーフ・タンク)をとらえている。さらに弊社は OPEC、OECD 諸国、インドなどの石油備蓄量も把握しており、お客様には各種比較や、より優れた視野にもとづく見解が得られるよう、支援している。
Orbital Insight は、人工衛星画像のコンピュータービジョンと AIS (船舶自動識別装置)の航行追跡データを、位置情報の追跡に加えることにより、中国の石油業界の動向をいっそう的確に可視化することができている。
コロナウィルスに関する本記事シリーズでは、中国の石油備蓄状況について、Orbital Insight GO がとらえる最新(データ: 2020 年 2 月 17 日現在)の実態を紹介する。なお、提示する数値は、メディアが予測した中国全土の石油需要より低いものである。
弊社のデータによると、中国の石油在庫は直近の 7 日間に 630 万バレル、増加している。それ以前の 30 日間は、1200 万バレル近くの増加だった。中国の石油備蓄は、前年比でわずか 343 万バレル増だ。昨年の大々的な備蓄と比較すれば、低い水準だ。一方、OPEC は前年比増の 2500 万バレルである。
上海港における船舶トラフィック

AIS(船舶自動識別装置)のデータは、 船舶の応答装置の追跡により取得できる。主な目的は、海洋レーダーを補完し、船舶の衝突を防ぐことにあるが、消費財の出荷について有用な情報を提供する上でも役立つ。
上海港は世界でもっとも活発なコンテナ港だが、春節の時期には総トラフィックが大幅に減少した。AIS データでは、この現象の季節性および通常状態への回復時期を数値化することができる。両年の春節における船舶のトラフィックは、2500 までに落ちた。もっとも、2019 年には春節の 19 日間後に、トラフィックは 1 日当たり 7300 船舶と、通常の状態に持ち直している。しかし、2020 年の同時期には 3500 に達したのみである。
Orbital Insightはまた、コンテナ船、原油タンカー、ばら積み貨物船や一般貨物船など、船舶の種類を動向のセグメントに加えることで、上海港の船舶トラフィックのパターンをさらに詳しく把握することができた。
他のデータソースとの組み合わせ
メディアは、中国の製油所は、需要薄とコロナウィルス感染拡大による労働者の減少を受け、燃料製品の生産を縮小していると報じている。例えば Bloomberg は、中国の製油所での処理が、1 年前に比べ 25% 落ちていると2 月 19 日に報道した。
同社は 2 月 14 日 には、生産縮小、貨物輸送の延期やキャンセルが数週間、続いた後、非国有製油所の稼働が 1 日あたり約 1000 万バレルまで落ちたと述べている。Bloomberg の報道によると、この水準は少なくとも 2014 年以降、最低であり、今月初旬の 1 日あたり 1140 万バレル、ならびに昨年平均の 1300 万バレル超から減少している。
Orbital Insight GO の中国の石油備蓄量データによると、同国の製油所が原油購入を拡大したとの報道は、いまだ裏付けが待たれる。
これは特に重要な事項である。Bloomberg の 2 月 14 日付の報道では、数週間にわたる生産縮小、貨物輸送延期やキャンセルの後、中国東部・山東省の非国有製油所が下落した原油価格を無視できず、先を争うように購入に乗り出したとしているからだ。
状況のモニタリング
Orbital Insight はお客様とともに、コロナウィルスが及ぼす経経済的な影響に関するデータの需要急増に、積極的に対応している。弊社は、燃料の需要指標やサプライチェーンの動き、観光トレンドの追跡のために、いかに Orbital Insight GO を活用するかのベストプラクティスや、公衆衛生当局が活用できるコロナウィルス感染拡大の緩和に資する重要なデータを、今後もブログで提供していく所存だ。
強調したいのは、Orbital Insight GO は、アナリストや政府関係者が、地理空間データを従来の情報ソースと組み合わせ、足元の課題について包括的かつ多元的な視点を得ることを可能にする、という点だ。
弊社では、地理空間分析によって自動車工場、空港、港湾やリテール・センター等の稼働停止と復旧を、いかに数字で可視化することができるか、今後も事例をお届けしたい。
Orbital Insight GO について:
Orbital Insight GOは、お客様がリテール、インフラストラクチャー、製造プロジェクト等を追跡するための、迅速、正確かつ効率的なデータをわずか数時間内で提供します。地理空間分析プラットフォームである Orbital Insight GOは、商品流通、工場の稼働停止、トラフィックのパターン他、多くの事象を追跡して異なる事象の全容をとらえ、変化するサプライチェーンの状態を把握することを可能にします。
Orbital Insight の浮き屋根式タンク追跡について:
Orbital Insight は地球の陸塊を日々、精査し、1 日数千にのぼる世界中の地上の浮き屋根式石油貯蔵タンク (FRT) の人工衛星画像を解析し、石油在庫の位置確認と計測を行っています。弊社製品は、客観的で透明性に優れ、タイムリーな石油備蓄量を日次で計測するため、光学や開口合成レーダー (SAR) の画像を始め、複数の地理空間データソースからの情報を活用しています。