ユニリーバ、位置情報データと衛星画像を使用しサプライチェーンにおける森林破壊を確認

インドネシアの大規模なパーム油農園の空中写真 Afriadi Hikmal | Moment | Getty Images

サマリー

ユニリーバのマーク・エンゲル最高サプライチェーン責任者によると、サプライチェーンの「ファーストマイル」、すなわち農家の畑から加工工場までの(作物の移動の)追跡は、大手企業にとって歴史的に困難だった。

ユニリーバは、地理位置情報データと衛星画像を使用して森林破壊が発生した可能性のある場所を特定するパイロット・プロジェクトを、テクノロジー企業 Orbital Insight(オービタル・インサイト)とともに実施している。

消費者もまた、公正な賃金、二酸化炭素排出量、動物福祉に関する情報など、製品の調達について理解を深めたいと考えている。

[ロンドン] — ユニリーバは、高度な衛星画像と地理位置データを組み合わせて使用し、アイスクリームの Ben & Jerry’s(ベン&ジェリーズ)からデオドラントの Axe(アクセ)にいたる同社の製品について、原材料の一部がどこから来ているのかを正確に理解しようとしている。

同社の最高サプライチェーン責任者、マーク・エンゲル氏によると、ユニリーバや他の多国籍企業が原料の正確な産地を個々の農場や畑にさかのぼって追跡することは歴史的に困難だった。

「従来、こうしたサプライチェーンを見ると、非常に長いうえに極めて不透明だ…。消費者はお茶を飲む、Dove(ダヴ)で髪を洗う、またはベン&ジェリーズで(アイスクリームを)食べるとき、サプライチェーンの末端にいる。一方、サプライチェーンの起点は通常、農家または土地を利用する会社だ。そして、その間に多数の関係者が存在する」とエンゲル氏はCNBC に電話で語った。

パー​​ム油はビスケットからシャンプーまで、あらゆる食料品や日用品の原料だ。パーム油は、収益性がより高いアブラヤシ農園を作るために樹木が伐採される森林破壊リスクを伴うため、注目の話題となっている。ユニリーバは「2023 年までに森林破壊を行わないサプライチェーンを実現する」と宣言している。

2018 年には、同社はパーム油のサプライヤー、搾油所、工場の詳細を公開。他のメーカー同様、パーム油に加えココアといった農産物の持続可能な調達の認証を第三者による検証に頼り、作物の栽培地域を確認していた。前出のエンゲル氏は「しかし、会社として、(農産物が)厳密にどこから来たのかは私もまだわかっていない」と CNBC に語った。

北京のスーパーマーケットにあるユニリーバの Dove(ダヴ)バスフォーム Zhang Peng | LightRocket | Getty Images

森林破壊が起きた場所を衛星画像で確認するのは比較的、容易だ。しかし、ユニリーバのサプライヤーが、複数の小農地から構成された可能性のあるこれらの地域で農作物を調達したかを特定することは難しい。現在、ユニリーバはさらに正確に状況をとらえるため、テクノロジーに注目している。

同社はソフトウェア会社 Orbital Insight(オービタル・インサイト)と連携し、農作物が畑から加工工場にいたるまで、いわゆるサプライチェーンの「ファーストマイル」として知られる「道のり」を把握するためパイロット・プロジェクトを実施している。パイロット・プロジェクトでは、携帯電話の信号からの匿名化された地理位置データを使用し、原料(の作物)が育てられている場所や輸送先をモニタリングする。

オービタル・インサイトのジェームズ・クローフォード最高経営責任者兼創設者は、CNBC との電話で次のように説明した。「(匿名化された)携帯電話のデータを用いて、(農場の)トラックをひとつの駐車場から別の駐車場まで実際に追跡し、各駐車場に入るトラックの数を数え、(ユニリーバに)マップ(地図)を提供することができた。アブラヤシの販売元にまでさかのぼった、同社の実際のサプライチェーンの様子を表すマップだ」

次に、データを高解像度の衛星画像と組み合わせる。画像がアブラヤシ農園の建設を可能にするため、その土地で森林破壊が行われたことを示唆する場合、ユニリーバはサプライヤーに、同地の農場から調達を行わないよう警告できる。オービタル・インサイトはアルゴリズムに対しトレーニングを実行し、森林破壊と、森林管理の一環として樹木が伐採される可能性のある地域との違いを理解できるよう図っている。

ユニリーバのエンゲル氏は、この技術は現在、ブラジルの大豆農園とスマトラのパーム油生産を監視に使用しており、初期段階にあると述べている。同氏は、ユニリーバは「商品の警察」にはなりたくないと強調した。

ユニリーバは、世界中の高度な衛星画像を介して何千ものサプライチェーンを監視するコストは膨大になることを鑑み、他の企業にも参画してほしいと考えている。「たとえば同様のサプライチェーンを持ち、動きが速い消費財企業のトップ 10 または 15 社が参加してくれれば、私たち全員が同じ携帯電話の信号を使用できる。それぞれのサプライチェーンで異なる箇所については、必要なコストは我慢できる程度になる。…私たちはこれを協調のためのツールにしたい」とエンゲル氏は語った。

サプライチェーンのデータを一カ所に集約するテクノロジー・プラットフォーム、Provenance(プロヴェナンス)のジェシー・ベイカー(Jessi Baker)最高経営責任者兼創設者によると、ブランド企業は製品の出所を消費者に伝えることにも熱心だ。プロヴェナンスが集めるデータには公正な報酬、二酸化炭素排出量、動物福祉に関する情報があり、消費者や従業員と共有することができる。

食品会社のブランド Napolina(ナポリナ)は、テクノロジー・プラットフォームのプロヴェナンスと協調し、消費者に製品の出所に関する情報を提供してきた ナポリナ | プロヴェナンス

プロヴェナンスは、イタリアのブランド、Napolina(ナポリナ)を展開する食品メーカーである Princess Group(プリンセス・グループ)と共同でプロジェクトを開始したばかりだ。ナポリナは調達とサプライチェーンを網羅する全社的な「透明性イニシアチブ(取り組み)」を実施している。プロジェクトの一環として、ナポリナは同社のトマトの缶詰について、特にイタリアの移民農業労働者の搾取に関する調査を踏まえて購入者に情報を伝え、安心させたいと考えていた。同社はプロヴェナンスと協力し、調達に関する詳細と、商品がたどった農協から食料品店までの「道のり」の情報につながる QR コードを缶に表示した。

ベイカー氏によると、プロヴェナンスの使用にあたり、各企業はその主張の根拠を提供する必要があり、情報を明らかにする過程で時に課題が顕在化するという。「私たちのフレームワークは、顧客と共有されている事柄を裏付ける証拠を必要とする。このため、その時点でブランド企業が(証拠)が十分ではない、もしくは基準を満たしていないと気づくことが多々ある」。「しかし、私たちのお客様は、このプロセスを通じてサプライチェーンに関しどういうことを考えるべきか、より深く学習している」と同氏は補足した。

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