地理空間分析で読み解く: ベイルートの爆発事故

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ベイルートの惨劇

8 月 5 日(米国東部標準時 5:20 pm)現在、ベイルートで発生した爆発事故では少なくとも135 人が死亡し、5000 人が負傷しています。行方不明者は数百万人に上り、爆発の原因も明らかになっていません。このような中、地理空間分析は、政府のアナリストや NGO(非政府組織)、初期対応者がこの大惨事に関する重要な事実を把握し、人命救助ができるよう、支援するものです。

衛星画像で即座に状況を把握

私たちの健康と安全、安心の維持は、政府や各種 NGO が、世界の出来事を正確に理解しているかにかかっています。しかしながら、「地球上で、また地球そのものに何が起こっているか」を知るための既存の情報源は、往々にして不完全で古かったり、また、手作業で分析が行われたものであったりします。Orbital Insight(オービタル・インサイト)は、米国空軍、米国防総省、同 国防イノベーション実験ユニット(DIUx: Defense Innovation Unit Experimental)、世界銀行といった様々な組織が、世界各地の物理的な状況を確実に捉えて異常を検知するとともに不測の事態を防ぎ、また、適切な安全保障政策、情報伝達および支援を展開することを支援しています。

Orbital Insight は AI を使用し、多様なソース(衛星画像、携帯電話の位置情報、コネクテッドカー等の IoT)からの地理空間データを、安全保障に関る重要な「問い」に対する「答」へと変換します。Orbital Insight のプラットフォームが提供するこのような機能は、弊社のお客様が、最先端のテクノロジーを活用し、人道的および経済的な目的達成に向けて「隠れた変化」をより素早く理解することを可能にしています。

私たちはベイルートの惨事を受け、人道支援活動を支援するため Orbital Insight の商用技術を用いて、爆発の影響を受けた現地のインフラストラクチャーの細かな変化を迅速に特定しました。本稿執筆時点でのエアバス社製の SPOT 衛星(分解能 1.5m)の画像を、Orbital Insight の土地利用アルゴリズムにより分析。わずか数分内で 18万平方メートル以上の土地面積を解析しました。

エアバス社 SPOT 衛星の画像(2020 年 5 月)
エアバス社 SPOT 衛星の画像(2020 年 8 月)

「画像」から「分析」へ

衛星画像は、地球規模の変化に関するリアルタイムの「答」と、定性的な情報をもたらす強力なツールです。しかし、通常の画像分析は時間と手作業のプロセスを要します。一方、弊社のコンピュータビジョン・アルゴリズムは、土地利用における様々な変化を大規模に、しかも自動的かつ正確に識別するために開発されています。

弊社の「Orbital Insight GO」プラットフォームでは、最新および過去の衛星画像のアーカイブ、自動化された土地利用マッピング、変化を検知するための期間比較を融合し、画像分析を数分足らずで完了することが可能です。

このような分析は、コンピュータビジョン・アルゴリズムなくしては数時間もしくは数日はかかるでしょう。その場合、アナリストは災害後の画像と、災害前のベースライン・データと手作業で比較する必要があります: まず、災害前の利用できる画像を入手し、オープンストリートマップ(OSM)のようなプラットフォームで建物の状況を把握するととも、災害後の調査結果を比較して出力情報を定量化せねばなりません。2020 年 1 月の弊社ブログ記事では、オープンソースプラットフォームを用いて各種インフラストラクチャーの最新の変化を把握したい際、なぜ往々にして客観的な衛星画像分析が必要であるかを説明しています。

Orbital Insight:ベイルートの土地利用分類(2020 年 5 月)
Orbital Insight:ベイルートの土地利用分類(2020 年 8 月)

爆発による被害の定量化

コンピュータビジョンを適用したベイルートの 5 月と 8 月の画像を重ね合わせると、爆発でどの建造物が破壊されたかが、1 枚の画像に正確に表示されます。青色は残っている建造物を、赤色は破壊された特定の建物を表しており、状況が一目で把握できます。

ベイルートについては爆心地が広く報道されていたため、弊社のテクノロジーは爆発による被害状況を迅速に確認し、定量化することに役立ちました。しかし、このアプローチは記録や裏付けとなる情報が少ない場合でも、広域な現場における同様の変化の特定と発見の取り組みにも適用できます。

Orbital Insight:2020 年 5 月から 8 月にかけてのインフラストラクチャーの変化(赤:破壊された建造物/青:現存する建造物)

船舶、貨物の潜在的な損失を明らかに

Orbital Insight の AIS(船舶自動識別装置)分析では、海洋事活動や海運についての知見をもたらすデータソースを複数、追加して重ねることができます。船舶トランスポンダーのデータは、主に海洋での安全維持と航行のために使われますが、貨物輸送や商品の動きといった港湾活動に関する位置情報なども送信しています。爆発時、Orbital Insight は爆心地に近い港内で複数の貨物船を確認しました。このようなデータは、例えば保険会社が保険金請求時の審査を行うために必要とするものです。

図中のラベルは船舶名、その位置、船種を示しています。

データの分析により有用な結果を

Orbital Insight がマルチソースの手法を取るのは、「もっとも豊かな分析は差別化されたデータソースを組み合わせることで実現する」と考えているからです。弊社のアナリストは、匿名化された携帯電話の位置情報などのデータソースを使用し、初期対応者が救援活動に注力すべきであろう場所を特定します。同時に、レバノンに影響を及ぼし得るサプライチェーンの潜在的な混乱を把握するため、AIS データを用いて爆発後の同港における船舶の運航パターンも明らかにします。

本データへのアクセスをご希望の人道支援組織、または Orbital Insight のお客様の方は、sales.japan@orbitalinsight.com までご連絡ください。

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地理空間分析サービスを開発・提供する、Orbital Insight(オービタルインサイト)の公式日本ブログです。英語版はこちら→ https://medium.com/@orbital_insight

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