所要時間約10分で全国人流分析|新型コロナ現状と人の経済活動
執筆:Orbital Insight |清水邦夫
Orbital Insight GO(オービタルインサイト・ゴー)は日本のみならず、全世界のモバイルデータを収集しており、企業や場所など関心のあるエリアと期間を指定するだけで、タイムリーな GPS データ(人流の傾向)を可視化することができます。
特に最近の製品アップデートで、全世界の膨大なGPSデータを処理するスピードが一段と飛躍し、標準的なものでは約10分~30分で、過去数年前から1日前までの世界中のGSPデータを、お客様が設定したエリアで計算できるようになりました。
本記事ではそのアップデートされた機能を使用して、新型コロナ影響下の東京の人の出入りを分析する過程、結果と考察を共有します。
目次
- 対象エリア選定と分析設定
- 結果と考察
- Googleの「COVID-19コミュニティモビリティレポート」との比較
対象エリア選定と分析設定
今回分析対象エリアは、新型コロナの影響が大きいと思われる東京都内(及びその周辺)の以下4つのエリアを対象としました。
- ホテル
- テーマパーク
- 公園
- 病院
それぞれのエリアに対し、大きさで上位30の各場所(計120ヶ所)を選択しました。下記がそのリストの一部です。
これらの場所をOrbital Insight GOに登録すること自体は、プラットフォーム上もしくはGISソフトウェアで作成することもできますが、上記のような公共の場所であれば、Open Street Map API(無料で利用可能な地理空間情報の巨大なデータベース)からポリゴンデータとして取得できます。
Orbital Insight GOにはそのようなファイルのインポート機能やAPIを実行できる分析環境もあるため、エリアの登録自体はものの数分で完了しました。
場所を登録し終えたら、後は細かいパラメーターを設定し、RUN(実行)を押すだけで計算が始まります。
今回、期間は新型エリアの影響を見るため、2020年1月20日から2020年6月10日に設定しました。(本記事作成日は2020年6月12日)
結果と考察
10分後に分析が終了しました。各エリアの総計値を以下にグラフで紹介します。
ホテル合計
東京の主なホテルの合計は、やはり自粛の影響を相当、受けているように見えます。特に4月7日からの東京緊急事態宣言を受けて、より一層人手が減り、4月末には底を打っているようです。
しかし、5月6日の緊急事態宣言解除により、人出は戻ってきているようにも見えます。
病院合計
病院は2月、3月とそこまで新型コロナで打撃を受けてないように見えますが、ホテルと同じく緊急事態宣言以降、人手が減少しています。
ゴールデンウィークの減少はどちらかと言えば、医療従事者の休日による減少ではないでしょうか。
公園合計
公園は他のエリアとは少々違った動きを見せています。2月からやや減少したものの、3月後半に向けて上昇しているのは花見の影響かと考えられます。いわゆる「自粛疲れ」が垣間見られます。
しかし、政府などの呼びかけにより一旦減少はしたものの、緊急事態宣言後も大きくは下落せず、解除後はまた上昇しています。
テーマパーク合計
テーマパークは、残念ながら3月以降どこもかなり厳しい状況を強いられている様子が見られます。3月の3連休で少々上昇しているものの、緊急事態宣言以降、また解除後もなかなか人出は戻ってきていません。
以上は合計での数値をご紹介しましたが、もちろんエリアごと(個別のホテル・公園・病院・テーマパーク)の分析も可能です。
Googleの「COVID-19コミュニティモビリティレポート」との比較
Orbital Insight GOのGPSを使った人流データの妥当性を検証するために、Google社が発表している「COVID-19コミュニティモビリティレポート」との比較をしてみました。
同レポートのデータでは最小エリア単位は「Tokyo」までで、測定に使われている個別の場所は公開されていませんが、同様の傾向が見られるのではないかと考えました。
カテゴリは、今回分析した「公園合計」に近いであろう「Parks Percent Change From Baseline (公園:基準値から%変化)」を使用します。
Googleが公開しているデータが、2月16日からだったので、弊社のデータも開始日をあわせてプロットします。
青が先程のOrbital Insight GOでの東京都内の主な公園30カ所の人出の合計で、オレンジがGoogleが発表している東京の公園モバイルデータインデックスとなります。
Googleのデータは基準値からの%変化であるため、そもそも厳密には比較の可否という議論はありますが、トレンドや各ポイントでの増減に関しては、大きく相関性があるところが見て取れます。
結論として、今回の人流データはGoogleのものとの強い関連性があると考えられるのではないでしょうか。
詳細な生データ、相関係数などをご希望の方は、ご公開いたししますので、お気軽に弊社日本支社までご連絡ください。
このようにOrbital Insight GOでは東京だけでなく、世界中の人の動きを分析が可能です。
今回はいくつかのエリアに絞って取り上げましたが、対象はユーザー様が選択でき、上記のようなマクロな分析から、より詳細な分析まで対応できます。
本記事ではその有効性をご覧いただければと思い、執筆した次第です。
詳しくは弊社ウェブサイトをご参照ください。
Orbital Insight について
Orbital Insight は地理空間分析を専門とする企業です。企業や組織のお客様が、地球上で、また地球そのものに何が起きているのかを理解できるよう、ご支援を提供しています。ユニリーバ (Unilever)、エアバス (Air Bus)、RBC キャピタルマーケッツ (RBC Capital Markets)、世界銀行 (The World Bank)、米国防総省 (U.S. Department of Defense) を始めとするお客様が Orbital Insight のセルフサービス分析プラットフォームを利用し、サプライチェーンの脆弱性やビジネス機会から国家安全に至るまで、様々な領域に関する知見を獲得されています。Orbital Insight は米国カリフォルニア州パロアルトに本拠を置き、セコイヤ (Sequoia) 、GV(旧 Google Ventures)、シェブロン (Chevron)、バンジ (Bunge) などの出資を得ています。